■広域の処理施設
市が、最終処分場のかさ上げ工事に着手することを決めたのは、大空町に建設される広域(網走市や美幌町など1市4町)ごみを焼却する中間処理施設の供用開始時期が、当初の見込みより「1年半から2年」ほど遅れることが判明したためだ。
広域ごみ中間処理施設の供用開始時期は当初、2028年とされていた。しかし、今年9月のメーカーアンケートの結果では、29年か30年にずれ込むことが濃厚になった(※ずれ込む要因は、建設現場の人材確保や資材調達など)。
■シナリオ狂う
網走市の最終処分場の当初計画では、32年までの15年間使えるはずだった。しかし、生ごみの100%たい肥化が実現できないことなどから、昨年12月の調査では「何もしなければ、あと4年後(26年)には満杯になる」(同市)とされた。
緊急事態を乗り切るため、市は今年2月に延命化方針を策定。各種の延命化策を講じることで、最終処分場の供用期間を28年度まで延ばすつもりだった。
網走市が当初描いていたシナリオは次の通りだ。
①28年には最終処分場が満杯になる
↓
②満杯になっても、28年から使える広域ごみ中間処理施設に網走のごみを運べばよいためギリギリセーフ
↓
③大空町の広域ごみ中間処理施設が28年までに稼働すれば、網走の〝ごみの行き場を失う〟という最悪な事態は回避できる
しかし、大空町に建設される広域ごみ中間処理施設の供用開始時期が「29年」か「30年」にずれ込む公算が大きくなったため、網走市のシナリオに狂いが生じ始めた。
最悪シナリオは次のようになる。
①網走市の最終処分場が満杯になる
↓
②広域ごみ中間処理施設は完成していない
↓
③網走市はごみの行き場を失い、市民は混乱する
市は、こうした〝最悪の事態〟を回避するためにも、最後の手段とも言えるかさ上げ工事の着手を決断したわけだ。
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かさ上げ工事には最大3億4千万円かかるとされる。多額の予算を投じることになるが、∧ごみの行き場を失う∨という最悪のシナリオを回避するための緊急措置である。
次回は、最終処分場の計画が狂ったことによる想定外の〝出費〟などを紹介する。