同大と同社は2022年度から共同研究を開始。その中でホタテの貝殻から開発した資材と同社が有する炭酸ナノバブル発生装置技術を組み合わせることで、コンクリートが硬化する際の水和反応が再現され、劣化を防止するだけでなく、表面を修復・再生できることを見出した。
共同研究講座の主宰は、これまで同社と連携して研究を進めてきた材料科学と粉体工学を専門とする同大機械電気系の大野智也教授。ホタテの貝殻粉末から得たカルシウム源と灰の一種であるフライアッシュを組み合わせ、効率よくコンクリートの強度回復が可能な複合体の開発をさらに進める。大きさや形が不ぞろいな天然物由来の粒子に対応可能な複合化技術の確立が課題という。
これに加え、創製した複合体をトン単位で量産できる合成プロセスの提案やコンクリートの微細なひびの内部に複合体を含浸させる技術開発にも取り組む。
同社取締役営業本部長の安立剛士氏は、同大で開いた記者会見で「有効かつ効率的に環境に優しい資材とできれば」と述べ、環境問題の改善と廃棄される資源の有効活用を同時に満たすことができる新技術に期待を寄せた。
大野教授は「二酸化炭素の固定化にも寄与するホタテの貝殻を産業廃棄物としてでなく、資源として取り扱える時代の実現を目指していきたい」と展望を語った。
同大と企業による共同研究講座の開設は今回で3例目。(理)