道は、ヒグマ人身事故発生時の対応方針に基づき、2019年度から事故の概要、発生要因その対策などを公表している。
2024年度のヒグマによる人身事故発生状況の1例目を紹介。
【発生日時】
2024年5月5日午後零時15分~1時頃
【発生場所】
浦河町上杵臼メナシュンベツ川付近
【付近の状況】
・川の氾濫原の端に位置する樹林帯の中
・林床には膝丈程度のササが繁茂し、目線の高さの視界は良好
・本流からは距離があり、せせらぎの音は聞こえない
【被害者情報】
様似町在住、81歳男性
【被害状況】
頭部および胸部に咬傷、腋に爪による傷、首に気管に達する傷、前腕に深い傷
【鳴り物等の携帯】
・クマ鈴やラジオ等は携帯していなかったが、山菜採り中は手持ちの鎌で立木を叩いて音を出していたほか、声を出して歩いていた。山菜採りを終えて、車に戻る際には音を出していなかった
・熊スプレーは持っていなかった
【発生状況と被害者の行動】
・山菜を採り終え、車に戻る途中、20~30㍍先に加害個体を発見
・被害者の足元がふらついた際に加害個体が被害者に向かって走ってきたため、声を出して存在を知らせたが効果なく、逃げようとして転倒したところを襲われ、手持ちの鎌で反撃したものの効果がなかった
【加害個体の行動形態】
・被害者に気付き、走って接近し攻撃
・被害者が窪地にずり落ちたところで、元の場所に戻っていった
【痕跡】
周辺で子グマと思われる足跡を確認(加害個体との関係性は不明)
【逃避行動】
被害者を探していた家族の叫び声に反応し、立ち去った
【住民への対応】
・注意看板を設置
・ハンター及び警察によるパトロールを実施
【考察】
発生要因
・執拗に攻撃していないため、捕食目的の行動とは考えにくい
・被害者との突然の遭遇による防御的な攻撃、あるいは子グマを守るための攻撃だった可能性がある
【対策】
・野外活動中は、クマ鈴などで常に音を出して人の存在を知らせる
・滞在時間が短くとも、山林に入る際はクマ対策の装備を持参し、複数人で行動する
【その他】
近年、農村地域では過疎化が進み人間活動が減少しており、過去にヒグマがいないとされていた場所であっても、現在はヒグマが生息している可能性がある。野外活動の際は、たとえ長年通っている場所であっても、事前にヒグマの生息・出没状況の情報収集が必要
<道・ヒグマ人身事故発生時の対応方針>