
調査では、人口1人あたりの蔵書数が1冊増えるごとに、高齢者の要介護リスクが4%減少する相関関係が確認された。さらに、10冊増加では約34%リスクが減り、図書館が1館増えると要介護者の割合が約48%少ないという傾向も確認された。この背景には、図書館が文化活動への参加や知的刺激を提供する場であること、図書館へ出かけることで身体活動を促すことなどが考えられる。また、無料で利用できることも大きな要因とされる。
北見市立中央図書館では、高齢者向けの資料の充実と、利用支援を指標に掲げている。館内には、大きな文字の本や小さな文字を読みやすくする拡大鏡を常設し、視力に不安のある人も読書を楽しめる環境を整備。また、目の不自由な人のための「対面朗読室」もあり、音声図書の視聴もできる。
読書は認知機能の維持や低下予防に役立つということは以前から知られているが、今回の調査結果を受け、同図書館の司書、川畑恵美さんは「図書館の数や蔵書数といった身近な環境と結びつけた調査結果が出たということは、とても意義があること」と話す。
同図書館では、年間100以上のイベントを企画しており、懐かしい映画の鑑賞会や北見市の歴史、風景を見るイベントもあり、楽しみにしている高齢者も多いという。このように、昔を懐かしむこと(回想法)は、認知機能の活性化や心理的安定にも良いとされている。
毎日の日課として、同図書館を訪れる高齢者もいて、新聞や雑誌を読んだり、本を借りたりと、憩いの場としての役割も果たしている。また、目的もなく立ち寄る高齢者には、家族からあらかじめ写真を預かっておき、様子を見守るなどの連携を行っている。
慶応大学などの調査グループは「財政難で公共サービスが削られる現状にあるが、図書館の有用性を改めて見直すきっかけになれば」とコメント。川畑さんも「単純に削減すれば、要介護認定者が増えるなど、結果的に財政負担が増えることは予想されます。今後も高齢者向けの資料を充実させていきたい」と話す。 (知)
