■地方創生
国の「地域おこし協力隊」制度は、2009(平成21)年度に創設。地方の人口減少や東京の一極集中を是正することが目的で、当時の安倍政権は看板政策「地方創生」の関連事業の一つとした。
網走市の水谷洋一市長(現在4期目)は、当時の安倍政権が提唱した地方創生に共鳴し、自身2期目(平成26年12月〜30年11月)の主要公約テーマを「人口減少社会への挑戦」、または「人口減少のインパクトの緩和」としたほどだ。
当時の安倍政権に深く傾倒していた水谷市長は、地域おこし協力隊による地域の活性化に期待を膨らませ、2015(平成27)年から受け入れを開始。しかし、協力隊制度の最大の目的である移住・定住につながったのは、現時点で1人だけという結果だ。
受け入れ開始から10年目を迎えたが、定住は1人だけという結果については市議会でも疑問視。昨年9月の同議会・決算審査特別委員会で金兵智則議員(民主市民ネット)は「(1人が定住したといっても)まだまだ。うまくいっているとは言い難い」と指摘した。
■赴任先
網走市の場合、地域おこし協力隊員は市の会計年度任用職員(以前の嘱託・臨時職員に似た非常勤職員)として採用する。隊員の勤務先や活動内容は、市役所の内部調整で決める仕組みだ。
これまでに赴任した7人の協力隊員の勤務先は、オホーツク流氷館や博物館網走監獄など。このうち、中心市街地の活性化を目的にした株式会社まちなか網走への隊員配置が最も多く、現在の隊員2人を含め計3人が勤務した。
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総務省によると、09年度から23年度までの隊員数は計6813人。このうちの65%が、任期終了後も赴任した地域に定住した(23年3月末時点)。
一方、網走市の場合は14%という結果。金兵市議の指摘通りに「うまくいっているとは言い難い」状況だ。
次回は、取材を通じて浮上した〝網走市の課題〟などを紹介する。