高卒者の市内就職6割切る
全市的な取り組みとは?
■市外への流出
網商は、現在の人口減少ペースで推移すると、近い将来に南高と桂陽高の間口は減らされる可能性があることを危惧する。提案書では、「(地元)高校の存続に向け、さらには地域活性化につなげるために各高校の魅力化を図り、市外への流出を防ぎ、加えて他地域からの人材をいかにして呼び込めるか、検討することが急務」とした。
市外への流出について、網商関係者は「毎年50人ほどは市外の高校へ進学していると聞く」と話す。実際はどうなのか?
取材すると、現在の網走市役所で市内中卒者の進学先(市内、市外)の詳細データを把握している部署はないことがわかった。
そこで本紙は、オホーツク教育局を取材。2024(令和6)年の市内中卒者256人のうち、市内高校(全日制)へ進学したのは175人だった。
つまり、23年の中卒者の3割にあたる80人ほどが市外へ流出したと考えられる。
市内の公立高校の「魅力づくり」を考えるとき、中卒者が市外へ流出する「理由」を探ることは不可欠。現状の把握は、未来戦略を考える上で最も重要なことだ。
■挑戦は失敗?
水谷市長は10年ほど前、「人口減少社会への挑戦」とのフレーズを繰り返していた。そして、挑戦するための施策集「総合戦略」第1期(2015~19年度)と第2期(2020~24年度)を策定。しかし、総合戦略には「公立高校の存続」をテーマにした施策は盛り込まれなかった。
第2期の総合戦略では「(市内)高卒者の市内就職率」について、24年の目標値を「65%」とした。実際の就職率は52・85%(今年3月時点)で、目標値より10ポイント以上も下回った。
これらのデータからは、市内の中卒者と高卒者(就職者)の市外流出割合は増加傾向にあることがわかる。
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水谷市長は、網商が提案書で求めた「地元高校の存続に向け、全市を巻き込んでの検討」について、「早急に議論できる場を立ち上げたい」との考えを示しているという。ただ、全市的な議論・検討に着手するために必要な、現状を把握できるデータが市役所内には足りないのが現状だ。
水谷市長の舵取りに期待がかかる。