■なぜ網走に?
上川大雪酒造は2020(令和2)年に帯広市、21年に函館市に酒蔵を開設している。いずれも地元の大学などと連携を強化しており、網走市はこうした実績にも着目し、21年7月に帯広市の酒蔵を視察したことが、天都山への〝酒蔵建設〟の始まりだ。
翌年12月、網走市と網走刑務所が民間企業や団体と連携して、「再犯防止」や「地域活性化」「産業振興」につなげるエントリー委員会(事務局・網走市)を立ち上げ、上川大雪酒造が加入した。
22、23年には、上川大雪酒造が発注者となり、網走刑務所などで木桶が制作。木桶制作を機に、網走刑務所と上川大雪酒造、そして網走市の距離がぐっと縮まり、今年8月の3者協定(網走市、大空町、上川大雪酒造)に至った形だ。
欠かせぬ存在からめ観光・産業振興めざす
■メリット
これまでの経緯を踏まえると、網走市内への酒蔵建設に向けては網走刑務所の存在が欠かせないことがわかる。
市は、酒蔵が完成し、醸造が始まることに伴ったメリットを、①観光・産業振興②地方創生分野の発展③雇用の創出④再犯防止―などとする。
①~③は、新産業の創出に伴った一般的な効果である。④の「再犯防止」については、今回のプロジェクトに網走刑務所がからんでいることを重視していると考えられる。網走市の酒蔵による地酒が誕生することで、市などはどのような再犯防止に取り組むのか注目される。
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網走市への酒蔵建設は、水谷洋一市長の強いこだわりで実現した。水谷市長の号令のもと、役所職員は実現に向けて知恵絞り、汗を流したようだ。
観光地として存在感が薄れつつある網走市。人口減少に伴い、地域の経済力にも陰りが見える。
水谷市長は〝網走の地酒〟を軸に、将来のまちをどのようにデザインするのか。舵取りに期待がかかる。