北海道出身の直木賞作家、河﨑秋子さんの講演会「北海道の直木賞受賞作家は一人の羊飼いだった!!」が23日、北見市立中央図書館で開かれた。
同図書館が主催し、当初の定員120人を大幅に上回る200人ほどの聴講者が詰めかけた。
国産の羊肉に感動、本場に渡り飼育学ぶ
河﨑さんは根室管内別海町生まれで北海学園大学経済学部卒。2014年、「颶風(ぐふう)の王」で三浦綾子文学賞を受賞し、これを機に作家デビュー。24年「ともぐい」で第170回直木賞を受賞した。「ともぐい」は、明治時代の北海道を舞台に、主人公の猟師が、山の中で獲物と対峙しながら生きる物語。河﨑さんは現在も北海道に住みながら作品を書き続けている。
河﨑さんは大学を卒業後、食肉用の羊を飼育。羊飼いとして働きながら、30歳を機に本格的に小説家を目指した。講演会では幼少時代から小説家として一人立ちするまでの半生を語った。
大学時代、国産の羊肉を初めて口にし「こんなにおいしい肉をなぜもっと生産しないのか」と疑問に感じ、本場ニュージーランドの農場で飼育方法を学んだ。「本来の私は石橋を叩いて壊してしまうほど慎重な性格だが、人との出会いもあり、面白いんじゃないか、やってみようと思った」と振り返った。
北海道で作家活動を続けることについて「よく『東京に出ないの』と聞かれるが、今はウェブ会議システムで打ち合わせをしたり、国会図書館のデータをネットで入手できる環境になり、都市と地方の格差がなくなってきた。また、顔や実名など公表したくない情報は伏せたままSNSなどで自分の作品を世に出すこともできる。今後はインターネットネイティブ※の世代からすごい作品が出てくるのではないか」と私見を述べた。
また「オホーツク地方は、光り輝く歴史や伝統が雪の中に埋まっているかもしれない。ぜひ、それらを掘り起こして作品に昇華し、発信してほしい」と呼びかけた。(柏)
※インターネットネイティブ=幼少期からインターネットなどのIT環境が身近にあり、日常的に使いこなす世代。