島根県海士町 財政危機から若者が集うまちへ ①

2025-07-09 掲載

(その他/社会)

まちづくり~未来へつなぐ物語

 少子化による学校の存廃は、オホーツク地域の自治体にとっても重い課題となっている。一方、同様の悩みを抱えていた島根県の海士町(あまちょう)は「島留学」や「島親制度」という独自の政策で高校の生徒数を増加させ、地域活性化と人口減少抑制につなげた。海士町の島留学制度の概要や成果、実際に島留学を活用した卒業生の声のほか、オフィシャルアンバサダー、半官半Xなど、ユニークな取り組みを紹介する。(3回連載予定)

地域、学校、行政が一体となり「島留学」「島親制度」などの取り組み

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 島根半島の沖合約60㌔に浮かぶ隠岐諸島の一つ、中ノ島に位置する、人口約2200人の町が海士町である。豊富な海産物だけでなく、米作りなど農業も盛んに行われている。

 当時の町長、山内道雄さんは、2002年から経費削減をはじめ、自らの給与カットなど、大胆な財政再建に着手した。この動きは管理職らに伝わり、自ら給与カットを申し出た。さらに一般職にも広がり、05年度には「日本一給料の安い自治体」といわれるほどになった。

 こうして捻出した費用を町の発展の原資とし、当時廃校の危機にあった地域唯一の高校、海士町の隠岐島前(どうぜん)高校の再建に着手。地域、学校、行政が一体となり、08年、「島留学」や「島親制度」などの取り組みを始めた。

 ◎島留学

 「留学」という形で、島外からの進学者を募集。生徒が「通いたくなる」保護者が「行かせたくなる」そんな魅力的な高校を目指し学校の改革にも着手。首都圏などの講師による「遠隔授業」や、生徒たちの夢実現へ向けての「夢探求」や「夢ゼミ」などを取り入れた。

 ◎島親制度

 島民たちが親代わりとなって、生徒たちを支える仕組み。入学前に生徒が興味のあるものをあらかじめ伝えると、それに応じて地域住民とのマッチングを図る。

 ◎公立塾

 学力向上と居場所づくりを目指し開設。同高校と連携して学習支援やキャリア形成など、生徒たちの多様なニーズに対応している。

 これらの取り組みにより、全国から生徒が集まっただけでなく、地元中学からの進学率も高まった(表①)。

 さらに、人口増加や観光客の増加にもつながった(表②)。

 こうした動きが広がる中で、地域住民と生徒との交流が活発になった。さらに22年より、週に1日、自分のやりたいプロジェクトに打ち込める「地域共創DAY」が導入され、地域住民と連携し、実践的に学んでいる。こうして地域住民とのつながりはさらに深まり、生徒自ら地域の課題を見つけ、地域住民と協力しながら解決を目指す取り組みを進めている。

 地域の人たちからは「若い人が一人でも増えれば嬉しい。自分も若くなれる」などの声が寄せられた。また、島留学をしていた生徒が、進学などで一旦は海士町を離れたあと、再び戻ってくるケースも増えている。

 次回は、東京から同校へ島留学し、卒業後は進学のため海士町をはなれたものの、「大人留学」という制度を活用し、現在は高校魅力化コーディネーターとして、海士町で活躍する、廣瀬惟來(ひろせいく)さん(20)を紹介する。 (知)

表①=島前高校、全校生徒数の推移(隠岐島前魅力化プロジェクトHPより抜粋) == 株式会社伝書鳩|経済の伝書鳩|北見・網走・オホーツクのフリーペーパー ==
表①=島前高校、全校生徒数の推移(隠岐島前魅力化プロジェクトHPより抜粋)
表②=地域への影響(隠岐島前魅力化プロジェクトHPより抜粋) == 株式会社伝書鳩|経済の伝書鳩|北見・網走・オホーツクのフリーペーパー ==
表②=地域への影響(隠岐島前魅力化プロジェクトHPより抜粋)

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