島根県海士町 財政危機から若者が集うまちへ (完)

2025-08-01 掲載

(北見市/社会)

まちづくり~未来へつなぐ物語

 これまで、島根県海士町(あまちょう)が「島留学」や「島親制度」といった独自の取り組みにより、地域で唯一の高校の廃校危機を乗り越えたことや、実際に島留学を活用した同校卒業生、廣瀬惟來(ひろせいく)さん(20)の話を紹介した。今回は、町の魅力を全国へ広める公式応援団「オフィシャルアンバサダー」と、役場職員としての仕事をしながら、自分の得意分野や夢も同時に追いかけられる働き方「半官半X」について紹介する。

町の魅力を全国発信する公式応援団に特典
役場職員の「好き」「得意」活かす働き方

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【オフィシャルアンバサダー】

 海士町を応援したい、つながり続けたいと思う人たちを公式に認定する制度で、2023年11月に50人を対象に試験導入され、24年4月に本格的に始まった。

 対象は過去に一度でも海士町に滞在したことのある人(日数不問)。アンバサダーに登録すると、デジタル名刺「プレーリーカード」が発行され、スマホをかざすと、カードの持ち主の自己紹介や海士町の紹介ページなどが表示される。また、専用LINEも用意されており、イベント情報や町の取り組みなどの最新情報が配信される。

 アンバサダーには3種類のプランがあり、プランごとに海士町を楽しめる特典やサービスが受けられる。年会費のほか、ふるさと納税でも参加できる仕組みだ。

 特典サービスとして、島を訪れた際には車の貸し出しや島の体験交流など、観光客とは異なる体験ができる。さらに、海士町の魅力を広めるため、「海士町オフィシャルアンバサダー特別クーポン」を、アンバサダー自身が発行できる。

 首都圏など都市部では、定期的に海士町ファンが集まるオフ会が開かれ、アンバサダー同士の交流も生まれているという。

 25年2月時点で登録者は約200人。アンバサダーからは「情報化社会の中で人とのつながりが希薄になりがちな今、『本来生きるってこういうことだよね』と実感できる場だ」といった声も寄せられている。

【半官半X】

 地域の担い手不足解消のため、役場職員が本来の業務(官)に加え、自分の「好き」や「得意」を地域のために活かす(X)という海士町独自の働き方。町は半官半Xを推進するため、20年に条例を制定し、翌年、「半官半X特命担当」が設置された。

 半官半Xには2パターンある。

 ◎兼業型半X

 職員が趣味や特技を活かし、職務時間の一部を地域活動に充て、その分給与を調整する希望制の働き方。水産、農業、起業、観光イベント、芸術など多様な活動が行われている。

 ◎公務拡大型特定半X

 「緊急性」「公益性」を重視し、業務の一環として行うもので、土木工事(災害復旧工事)、デイサービス、部活動指導などが含まれる。

 担当課長は「地元の人も、移住してこられた人も、一緒になって汗をかく。この一体感がすごく大事。自分で足を踏み込み、一緒に寄り添い、現場の課題を支援することが公務員として本来あるべき役割だと思う」と語る。

 このような海士町独自の取り組みが、ほかの地域でもまちづくりの参考になればと思う。 (知)

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