■「レジャー」の域超え
網走市がまとめた独自ルール案は「釣り竿は3本まで」とし、理解と協力を求める考えだ。
網走市内のサケ釣りポイントは10カ所ある。シーズンになると、日の出前から多くの釣り人でにぎわう。
市の調査(今年5月に発表)によると、釣りポイントの一つ、藻琴・北浜海岸での「ぶっこみ釣り」(※)の竿の本数は「4~6本」が75%だった。
岸にずらりと並んだ竿は「場所取り」ともなる。美幌町のサケ釣り愛好家(50代の男性)は「10本以上並べる人もおり、レジャーの域を超えた感じ。こういう人に近づくのはちょっと怖い」と話す。
(※釣り針に餌をつけて海に投げ込み、竿を岸に置いたままにしてサケが食いつくまで待つスタイル)。
「資源の枯渇につながる」関係者は危惧
■3尾まで
市の独自ルール案では、「釣る尾数は3尾まで」としている。なぜか?
近年のサケ釣りフィーバーは、斜里町や網走市などにとっては貴重な水産資源にも影響を及ぼしかねない状況になっている。
市の調査では、8月から11月末までに市内でサケ釣りを楽しむ人は約3万5千人。愛好者の平均釣果(1人で1~2尾)を掛け合わせると、1シーズンで「3万5千~7万尾」が釣られていることになる。
市内を流れる網走川と藻琴川での親魚(しんぎょ)の捕獲尾数は20~40万尾。サケ釣り愛好家の釣果の増加は、川に溯上するサケの減少ともなる。市の担当者は「サケの再生産に影響を与える可能性があり、資源の枯渇につながりかねない」と危惧する。
■提言書
網走市の独自ルール策定は、市内の大学や漁協などの代表者らからなる「同市さけ・ます等遊漁対策検討委員会」の求めに応じた形だ。
同委員会が今年7月に水谷洋一市長に提出した提言書には、次のような分析が記されている。一部を紹介する。
~提言書より~
「現在発生しているサケ・マス遊漁に関する問題の多くは、一般常識やモラルのない一部の釣り人の行動によるものとあわせて釣り人に対する規制やルールが明確に示されていないことが原因であると考えられます」
……………………
網走市と斜里町、小清水町の1市2町が足並みを揃えた前例のない対策に乗り出すことになった背景には、「一般常識やモラルのない一部の釣り人の行動」がある。
独自ルールに罰則規定はなく、効力を疑問視する声もある。ただ、今後もモラル・ルール違反行為が後を絶たなかった場合、ルール(規制)はさらに強化・厳格化されるであろう。
網走市の担当者の言葉だ。「釣り人同士で注意しあえるような環境になるのが理想です」。