置戸町内で発行されている地域新聞「置戸タイムス」が12月31日付の3720号の発行を最後に休刊、73年にわたる歴史に幕を下ろす。1951年の創刊以来まちの政治、経済、産業、生活、文化など、きめ細やかな情報を発信し、町民から愛され続けてきた。発行元の置戸タイムス社代表取締役の田村昌文さん(76)は「最終号が完成するまではあまり実感がないですね」と語り、地元紙としての最後の役割を果たそうと慌ただしい時間を過ごしている。
青年有志グループ「木曜会」が町の発展を図る手立てとして町内に情報を届けようと、1951年9月に創刊した。当初は木曜会メンバーが記事を書いていたが翌年には町内に印刷設備を整え、専属の記者も配置。置戸タイムス社を立ち上げ、現在と同じ週1回紙面を発行した。タイムスの号外版から「町政だより」「公民館だより」が派生し、現在の「広報おけと」の発行につながるなど、町の広報役としてまちづくりを支えてきた。
タブロイド判より一回り小さな八つ切サイズ4面構成で毎週木曜に発行している。2016年には記者の体調不良に伴い、廃刊の危機にさらされたが、元副町長の田村さんの入社により、その難を乗り越えた。
町内購読率80%を越えた時代もあるが、現在はピーク時の半数程度にあたる約760部の配布にとどまり、購読者数が減少していた。また、事務員を含め4人体制で運営しているが、田村代表をはじめ取材活動を担う編集長、編集委員の3人が70歳以上の高齢ということもあり、後継者の不在を理由に休刊を決意、10月に社告で発表した。
町民からは「お茶飲み話がなくなってしまう」「すごく寂しい。どうにかならないか」「町のことをこれからどうやって知ればいいの」などと休刊を惜しむ声があちこちで聞かれ、11月の移動町長室でも継続を求める声が上がった。
田村さんはこれまで発行された紙面を広げ「いろんな店が競うように広告を出していた」「ゴシップ的なネタが新聞の彩りになる時代もあった」などと懐かしみつつ、73年にわたる紙面発行について「よく続きましたよね」としみじみ。仕事への誇りと高い熱量、地元紙の歴史を支えていかなければならないという義務感が原動力だったという。
「先輩達が続けてきたタイムスの歴史を少しでも長く続けようという思いでやってきました。残念だけど、いい時に辞められたとも感じています」と率直な思いを明かし「現職時代とは違う立場でまちを支える多くの人達に出会うことができ、おもしろかったし、ありがたかった」と感慨深げに語った。
最終号は未来を担う若い世代の特集などを盛り込む。「タイムスの歴史は終わるが、まちは続いていく。明るく最後を迎えられれば」と話している。 (理)