記者は、NPO法人きよさと観光協会の募集チラシを見た瞬間、心を躍らせた。チラシには、「月明りに照らされる神秘的な空間。五感が研ぎ澄まされるような非日常を味わいましょう」―と書かれていた。
夜の雪原、月明り、スノーシュー。このフレーズだけで、神秘的な世界が待っているのだと直感し、参加することを決めた。
3月8日の午後6時、ツアー集合場所である同町の情報交流施設「きよーる」に到着。記者のほか6人が参加し、ガイドさんの車に乗り込んで現地に向かった。
「ほしかぜの丘」は市街地から車で5分ほどの場所にあった。以前は牧草地だったらしく、丘の頂上からの眺めは最高らしい。記者は「けど、真っ暗な雪原からの眺めはどうなの?」と、ちょっとだけ疑いの気持ちがあった(職業病である笑)。
ガイドの大野恵さんは、清里町の地域おこし協力隊員で、ムーンウォークツアーを企画した張本人。清里町において前例のないネイチャーツアーだったが、「『やってみたら』と言ってくれた、きよさと観光協会の皆さんのおかげ」(大野さん)で、実現にこぎつけた。
今回の参加者の中には、スノーシュー初心者も数人いた。現地到着後、スノーシューを履いて歩く際の注意点を聞き、軽く準備運動をして、いざ出発。ヘッドライトを頼りに真っ暗な雪原を歩き始めた。
「ヘッドライトを消してみて下さい。目が慣れてくると月明りで周りが見えるようになりますよ」と大野さん。たしかに、木々の影や雪原についた野生動物の足跡などをしっかり見られるようになってきた。
人工的な光がまったくない中、冬の雪原を歩いていると、星の輝きや自身の吐く息の音などに敏感になってきていることに気付いた。「チラシに書いてあった通りに〝神秘的な空間〟ですなぁ」と心の中でつぶやいた。
歩き始めて30分ほど経ったころ、頂上付近の撮影ポイント「1本の木」に到着。大野さんが用意してくれたホットドリンクで体を温めたあと、参加者全員でヘッドライトやスマホの光を利用したライトアートに挑戦。カメラに向かって数秒間、「KIYOSATO」と手を動かすと、闇夜に浮かぶ光の文字が完成した。当然、全員が大興奮した。
今回のツアーには、大野さんの夫・公大さんも同行し、サポートしてくれた。ムーンウォークツアーの魅力は、公大さんが発した一言につきる感じがする。
「最高の夜遊びですよね」
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大野さんが企画したムーンウォークツアー。地域おこし協力隊員のような〝外部の視点〟が、地域の魅力の再発見につながることを改めて実感させてもらった。
