ヒグマの生息数に比べ捕獲従事者の数が足りないことから、道は比較的経験の浅い捕獲従事者(ハンター)向けの「ヒグマ講習会」を道内5カ所で開催した。このうち北見市民会館の会場には所属猟友会などから100人を超す若手ハンターらが参加。経験豊富な専門家から銃器で捕獲する際の心構えや現場での生々しいやりとり、熟練者のアドバイスなどを具体例で聞き、緊張感を新たにした。
ヒグマ管理計画(2024年12月改定)に基づいて個体数を調整し、人とのあつれきを低減することなどを目的に企画。若手ハンターとヒグマに特化した講習会は珍しい。
北海道環境生活部ヒグマ対策室が、全道のヒグマ個体数を2022年時点で約1万2200頭(中央値)と報告。めざす個体数7980頭に向け、今後10年間で1万3290頭の捕獲を想定していることなどを説明した。
講習会の講師は、獣害対策の専門家で合同会社ワイルドライフプロの葛西真輔氏。斜里町在住で生態調査や被害対策の仕事をしており、これまで自分で捕獲したヒグマは15頭、立ち会った捕獲は200頭に及ぶと切り出し、「いろんな危ない場面にも遭遇した」と受講者の耳を引き寄せた。
「100㍍ほど離れていてもこちらに向かって数秒で突進してくる個体もいれば、いなくなったと思ったら、いつの間にかすぐ横の草むらから現れた個体もいる」と例を上げ、「自分も一昨年、顔を叩かれる事故に遭った」と打ち明けた。その上で「数メートルに近づいたら、銃よりも熊スプレーのほうが有効だと思う」と助言した。
ヒグマ捕獲に長年携わった熟練者の声から「捕獲に携わっているときは気を緩めず、全神経を集中させること」「恐怖心はよくない。冷静に対応できる度胸が必要」といったアドバイスを紹介し「1にも2にも…5にも安全が大事」とまとめた。
参加した40歳代の男性は「ふだんエゾシカ猟には出るが、ヒグマの捕獲経験はない。万一出遭った際などすごく参考になった」と受講の感想を述べた。 (寒)