道が公表する2024年度ヒグマによる人身事故発生状況の2例目を紹介。
【発生日時】
2024年6月3日午後3時頃
【発生場所】
雨竜町恵岱別恵岱別川支流の沢
【付近状況】
・恵岱別川右岸斜面の森林とその上に位置する水田の境界にある斜面崩壊地
・植生はフキやオオイタドリ、ササで構成され、見通しは悪い
・斜面崩壊地の傾斜角度は60〜70度で、急こう配
【被害者情報】
岩見沢市在住、51歳男性
【被害状況】
左胸に爪による深い裂傷、背中にまばらな擦過傷
【鳴り物等の携帯】
・クマ鈴を携帯していたほか、調査班員が15分に1回程度、火薬銃を鳴らしていた
・熊スプレーと鉈(なた)を携帯していた
【被害者の行動】
・斜面崩壊地の調査のため、2〜3名の計2班に分かれて行動
・2名で行動していた被害者はもう1名の班員に20〜30㍍先行して調査を行っており互いの姿は見えなかった
・調査を終えて林外で休憩中に、およそ10㍍離れた場所の藪がガサガサと動き、もう1名の班員が来たと考えて声を掛けるも反応なし
・休憩を終えて移動しようとした際、ヒグマ1頭がうなり声を上げながら藪から飛び出してきたため、大きな声を上げ、背中を向け走って逃げたところ、携帯していた熊スプレー等を使う間もなく、押し倒されて負傷
【加害個体の行動形態】
藪から飛び出し、歯をむき出してうなり声を上げながら被害者へ突進し、押し倒して馬乗りになる
【痕跡】
被害者と別行動をしていた班員が子グマと思われる鳴き声を聞いている
【逃避行動】
襲撃後、すぐに被害者から離れて走って山を下りていった
【加害個体への対応】
・箱わなを設置
【住民への対応】
・注意看板を設置
・猟友会によるパトロールを実施
・防災無線により注意喚起
・学校及び各保護者へ注意喚起
【考察】
発生要因
・加害個体が被害者を押し倒した後すぐに被害者から離れて逃げたことから、食害目的による積極的な攻撃や好奇心からの接近・攻撃だったとは考えにくく、事故発生時に被害現場である崩壊地で子グマの鳴き声が確認されていることから、子グマを守るための母グマの防御的な襲撃であったと考えられる
・2班に分かれ、さらに被害者が先行して調査を行っていた結果、被害者と他の調査班員で親子グマを囲い込んでしまったことで、藪の近くに居た被害者が襲われた可能性がある
・加害個体の突進に対し、背を向けて走って逃げてしまった
【対策】
・見通しの悪い環境では単独行動しない
・クマと遭遇した時は、背を向けて走らない
・呼びかけに対して反応がなかった時点でヒグマの存在を想定し、熊スプレーを準備する
【その他】
・複数人が一緒に行動することで襲撃時にすぐ助けに入る、あるいは助けを呼ぶことができるほか、会話することで人の存在を早めに知らせることができる
・これまでに発生したクマによる人身事故では、致命傷になりやすい頭部を攻撃された例が多く、森林内で調査や作業をする際は、滑落時のケガ防止などと合わせてヘルメットの着用が推奨される