■報道ファースト
市のHPで「概要版」が公表されたのは、7月5日だった。
同市教委は7月4日午後3時半の記者会見で、第三者委の調査報告書全文を配付し、その日の夜に公表することを伝えた。続いて、同日午後6時半の関係保護者の説明会で同様の説明をしたものの、「加害生徒への配慮も必要」との声が寄せられ、結果的には、7月5日の「概要版」のみの公表に至った。
関係保護者より先に報道機関に説明した理由について、同市教委は「夜遅くに(会見場)に来てもらうのはいかがなものかと考えた」とした。
報道機関、関係保護者に説明した〝同じ日〟に公表する―。同市教委は、こうしたスケジュール感を念頭に準備を進めてきたようで、こうした頑な姿勢が、関係保護者らへの配慮を欠き、結果的に〝報道ファースト〟につながったと考えられる。
■被害者ファースト
3件のいじめ事案についての第三者委が設置(23年)後、網走市教委は〝被害者ファースト〟を念頭に対応してきた。一方で、加害生徒への対応はどうだったのか?
文科省のガイドラインでは、調査結果を踏まえた対応として「加害者に対して、個別に指導を行い、いじめの非を気付かせ、被害生徒への謝罪の気持ちを醸成させる」となっている。
個別指導・対応は一切なく
調査報告書の内容も直前まで知らされず
調査報告書がまとまった昨年12月以降、同市教委は加害生徒に対して「個別指導・対応」をまったくしていない。
また、加害生徒・保護者が調査報告書(全文)を読んだのは、公表するとしていた今月4日の説明会が初めてだった。取材に対し、同市教委は「(被害者と同様に)加害生徒・保護者と公表内容について事前調整する必要はないと考えていた」としたが、文科省のガイドラインにはそのような記述は見当たらない。
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被害者ファーストは当然だ。しかし、加害者にも人権があることを忘れてはいけない。しかも、今回の対象者は、将来のある中学生である。
同市教委はA中学校のほかにもB中学校のいじめ事案についても第三者委を設置し、調査は継続中だ。
今の水谷市政にはA中学校の教訓を、今後の教育行政にしっかりと反映させることが求められている。