連載 いじめ結果公表 網走市教委の対応パート2 ㊦

2025-07-11 掲載

(網走市/教育)

加害生徒への対応、文科省の指針に従わず

 網走市教委は、2022(令和4)年から23(令和5)年にかけて市内A中学校で起きた3件のいじめ事案についての第三者委員会による調査報告書「概要版」を公表した。公表に至る中で、関係保護者より先に報道機関に調査報告書の全文を配付していたほか、文部科学省の指針に従わない形で加害生徒に対応していたことが明らかになった。 (大)

〝頑なな姿勢〟が関係者への配慮欠き
「報道優先」保護者説明は後回し

■報道ファースト

 市のHPで「概要版」が公表されたのは、7月5日だった。

 同市教委は7月4日午後3時半の記者会見で、第三者委の調査報告書全文を配付し、その日の夜に公表することを伝えた。続いて、同日午後6時半の関係保護者の説明会で同様の説明をしたものの、「加害生徒への配慮も必要」との声が寄せられ、結果的には、7月5日の「概要版」のみの公表に至った。

 関係保護者より先に報道機関に説明した理由について、同市教委は「夜遅くに(会見場)に来てもらうのはいかがなものかと考えた」とした。

 報道機関、関係保護者に説明した〝同じ日〟に公表する―。同市教委は、こうしたスケジュール感を念頭に準備を進めてきたようで、こうした頑な姿勢が、関係保護者らへの配慮を欠き、結果的に〝報道ファースト〟につながったと考えられる。

■被害者ファースト

 3件のいじめ事案についての第三者委が設置(23年)後、網走市教委は〝被害者ファースト〟を念頭に対応してきた。一方で、加害生徒への対応はどうだったのか?

 文科省のガイドラインでは、調査結果を踏まえた対応として「加害者に対して、個別に指導を行い、いじめの非を気付かせ、被害生徒への謝罪の気持ちを醸成させる」となっている。

個別指導・対応は一切なく
調査報告書の内容も直前まで知らされず

 調査報告書がまとまった昨年12月以降、同市教委は加害生徒に対して「個別指導・対応」をまったくしていない。

 また、加害生徒・保護者が調査報告書(全文)を読んだのは、公表するとしていた今月4日の説明会が初めてだった。取材に対し、同市教委は「(被害者と同様に)加害生徒・保護者と公表内容について事前調整する必要はないと考えていた」としたが、文科省のガイドラインにはそのような記述は見当たらない。

 …………………

 被害者ファーストは当然だ。しかし、加害者にも人権があることを忘れてはいけない。しかも、今回の対象者は、将来のある中学生である。

 同市教委はA中学校のほかにもB中学校のいじめ事案についても第三者委を設置し、調査は継続中だ。

 今の水谷市政にはA中学校の教訓を、今後の教育行政にしっかりと反映させることが求められている。

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