船での部屋は窓はないが個室。「楽器の練習ができるように個室だったのかもしれません。でも、同じ演奏者でも二人部屋の人もいたので、日本人は待遇が良いのかなと思いました」という。
最初は船酔いに悩まされ「克服までにひと月ほどかかりました」。また、船員のひとりとして、何かあったときに乗客を誘導できるように、避難訓練なども行ったそう。
基本的に会話は英語のため、生活面でのコミュニケーションで苦労も。また「プライベートと仕事場が一緒で気が抜けないところも大変でしたね」。
着港した場所には乗客と同様、陸地に降りることもできたため、「クラシックの本場ヨーロッパでは頑張ってチケットをとって演奏を聞きにいったり、バッハの家など観光もできました」と笑顔をみせる。
このほか南極でペンギンを間近で見たり、砂漠や白夜に感激し、年越しはマダガスカルで迎えた。「貴重な経験でした。普通の旅行ではなかなかできないことだと思います」。
毎日3〜4回、お客さんを前にした演奏をするうちに菊地さんのファンも増えていった。「お客様との距離が近いステージ。直接反応がありますし、声をかけてもらえるのもうれしかったです。緊張に強くなり、自信につながりました。自分にとって大きな影響があったと思います」と胸を張る。
価値観変わり奏者として自信に
2回の船旅を終え「価値観は変わったと思います」という。「細かいことを気にしてもしょうがないと、前よりおおらかになった気がします。外国は遠く感じていましたが、今は違う。大変なこともありましたが行ってよかった」と目を輝かせる。
今後は東京を拠点に演奏活動をする予定。現在は帰郷すると北見で後進の指導にもあたっており「北見で何か幅広く貢献したり、演奏会を開いたりできたら」と考える。また、「音楽を仕事にするのは難しいと思っている子もいるかもしれませんが、このような働き方もあると知ってもらいたい」と話す。
「またピースボートに乗りたいですか?」の問いには「機会があったら。まだ行っていないオーロラコースもあるので、せっかくなら乗ってみたいですね」と笑顔で答えた。 (菊)