創立50周年迎えた野村興産㈱ 留辺蘂・イトムカ鉱業所

2024-01-23 掲載

(北見市/社会)

日本で唯一の水銀含有製品処理・リサイクル事業

 北見市留辺蘂町富士見のイトムカ鉱業所などを運営する野村興産㈱は昨年12月、創立50周年の節目を迎えた。日本で唯一、水銀含有製品の処理・リサイクル事業を行う同鉱業所には毎年、全国から千人を超える視察者が訪れる。かつての水銀鉱山業のノウハウをもとに、世界トップクラスの水銀リサイクルシステムを確立した同鉱業所を訪ねた。

かつての水銀鉱山業のノウハウをもとに幅広い素材の処理・リサイクル手掛ける
全国から自治体や排出事業者が視察に訪れ

鉱山時代の選鉱場跡(鉱石を選別する施設) == 株式会社伝書鳩|経済の伝書鳩|北見・網走・オホーツクのフリーペーパー ==
鉱山時代の選鉱場跡(鉱石を選別する施設)

 北見市留辺蘂町富士見のイトムカ鉱業所などを運営する野村興産㈱は昨年12月、創立50周年の節目を迎えた。日本で唯一、水銀含有製品の処理・リサイクル事業を行う同鉱業所には毎年、全国から千人を超える視察者が訪れる。かつての水銀鉱山業のノウハウをもとに、世界トップクラスの水銀リサイクルシステムを確立した同鉱業所を訪ねた。

 同社の創立は1973(昭和48)年。戦前からイトムカ水銀鉱山を運営していた野村鉱業から施設や技術を引き継ぎ、水銀廃棄物の処理を行う会社に転身。乾電池や蛍光灯などの水銀使用製品等の処理・リサイクルシステムを構築し、近年は蓄電池として使用されるナトリウム硫黄電池なども受け入れ幅広い処理・リサイクルを手掛けている。

 北見市の中心部から約60㌔離れた大雪山系の麓にあるイトムカ鉱業所。同社の中核的な水銀リサイクル拠点で、148㌶の広大な敷地に各種プラントや分析・研究施設、倉庫などが並ぶ。ここでは年間約3万㌧もの廃棄物を処理しているという。

 主力の水銀処理は「ロータリーキルン」と多段式焙焼施設の「ヘレショフ炉」を用いる。それら焙焼炉では廃棄物を600~800度に加熱して含まれた水銀を気化させ、水銀蒸気を冷却し、さらに高純度の水銀金属に精製して出荷している。

 精製された水銀は再び水銀試薬や銀朱(塗料の材料)、特殊計測機器の材料などにリサイクル。また、蛍光灯のカレット(ガラスくず)もグラスウール(断熱材)やコンクリートの原料、一部郷土工芸品(グラス等)の材料として出荷するなど、水銀以外の素材も可能な限り循環できるシステムを完備。敷地内には管理型最終処分場も備えており、中間処理から最終処分まで行う〝完結型処理〟が大きな特長だ。

 同鉱業所製造課・技術開発課の森谷佳裕課長は「焙焼や焼却、精製などの中間処理から最終処分まで徹底した管理を行い、有害ガスの発生や工場からの排水は一切出さないクローズド型の処理を行っています」と胸を張る。

 高度な水銀リサイクルを行う同鉱業所には、全国から多くの自治体や排出事業者が、視察に訪れる。同社は来場者に地元の留辺蘂や北見市の観光名所や食事処を紹介するパンフレットを独自に作成、配布するなど観光振興にも力を注ぐ。「北見をはじめ地域の理解と支えがあっての鉱業所。地元のPRを含め、これからも地域に恩返しをしていきたいですね」(森谷課長)と語る。(柏)

………………………………

 同社は50周年事業として、北海道に企業版ふるさと納税を1千万円、北見市へ500万円、北見地区消防組合消防署留辺蘂支署へ500万円、奈良県宇陀市に500万円の寄付を行った。

◆野村興産株式会社(藤原悌代表取締役社長・本社東京都)資本金1億8200万円、社員数205人(2023年3月末現在)。イトムカ鉱業所をはじめ国内に5カ所に営業所や工場を構えるほか、留辺蘂町滝の湯の塩別つるつる温泉を運営する。

【同社の沿革】

 同社の前身、野村鉱業が1939(昭和14)年から、イトムカ鉱山で水銀を生産。1973年、イトムカ興産が設立され、鉱山業のノウハウを生かし水銀廃棄物の処理を開始。75年、社名を野村興産に変更し現在に至る。

ヘレショフ炉(多段式焙焼施設) == 株式会社伝書鳩|経済の伝書鳩|北見・網走・オホーツクのフリーペーパー ==
ヘレショフ炉(多段式焙焼施設)
ロータリーキルン(焙焼施設) == 株式会社伝書鳩|経済の伝書鳩|北見・網走・オホーツクのフリーペーパー ==
ロータリーキルン(焙焼施設)

キーワード

  • 水銀含有製品処理
  • リサイクル事業

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