ヒグマとの「危険遭遇事案」発生状況
◇2024年度2例目
【発生日時】2024年6月17日午後7時半頃
【発生場所】美唄市東明2区(ふるさとの見える丘展望台に至る道路)
【付近の状況】
・展望台へ向かう幅約5㍍の舗装道路
・遭遇場所は標高約230㍍、展望台から数百㍍手前の地点
・道路わきにはシラカンバやササが生育し、ササはヒグマが隠れるほどの高さ
【遭遇者情報】
・美唄市在住
・60代男性
【ケガ等の被害】
・なし
【鳴り物等の携帯】
・スピーカーで歌謡曲を流していた
・熊スプレーを携帯していた(使用経験あり)
∧発生状況∨
【遭遇者の行動】
・午後7時過ぎにジョギングを開始
・展望台から数百㍍手前の直線路を走っている際、右側の藪からうなり声が聞こえた気がして、10㍍ほど進んだ位置で停止
・振り返ってウエストポーチから熊スプレーを取り出し、ストッパーを外して大声を上げていると、うなり声が聞こえた辺りの藪からヒグマが現れ、走って向かって来た
・約5㍍の距離でスプレーを噴射し、4~5秒間噴射し続けると、ヒグマは遭遇者から2~3㍍の距離で方向転換し藪へと走り去った
・ヒグマの逃走後、気配を感じなくなってからすぐに引き返し、公園管理事務所に目撃情報を報告後、帰宅してから警察に通報した
∧出没個体の特徴∨
【行動形態】ガードレールを乗り越えて、うなり声をあげながら遭遇者に向かって走って接近
【痕跡】なし
【逃避行動等】熊スプレーの煙を浴びながらも進み続けたが遭遇者の2~3㍍手前で方向転換して藪に走り去る
【出没個体への対応】なし
【住民への対応】
・ふるさとの見える展望台に至る道のふもとのゲートを封鎖
・出没注意看板を設置
・市役所によるパトロールを実施
・目撃情報を市のスマホアプリとホームページに掲載
∧考察∨
【発生要因】
・出没個体は遭遇者の手前で逃走し、執拗につきまとうといった行動を見せなかったことから、捕食等目的の積極的な攻撃とは考えにくい
・うなり声が聞こえてからの突進であるため、近くにシカの死体などの食物があった場合や近くに子グマがいた場合、これを守る防御的な攻撃だった可能性がある
【対策】
・ヒグマの活動が活発になる薄暮時にヒグマが生息する環境で単独で活動することはリスクの高い危険な行為であるため、ヒグマが居そうな環境や時間帯を避け、複数人で活動することが望ましい
・絶えず音が鳴り続けていると、動物の声や藪の音等の周囲の音が聞き取りにくくなる恐れがあり、ホイッスルの使用や要所で声を出すなど、より遠くまで音が届き、かつ周囲の音を聞くことができるような対策が望ましい
・使用された熊スプレーは使用期限が切れ、使いかけの状態だった。結果的にヒグマが走り去るまで噴射し続けることができたが、熊スプレーを所持する際は、使用期限が切れていないことや残量が十分あることを定期的に確認する必要がある
・遭遇者は、現場はヒグマがいる環境であることを認識し、音を鳴らす、熊スプレーを所持するといった被害防止対策をとって入山し、うなり声が聞こえたような気がした時点で、ヒグマの姿を見る前から熊スプレーを使用できるよう準備していたことで、その後の突進にも対処できた。さらに、遭遇者はクマスプレーの使用経験があり、これがストッパーを外す動作の素早さやスプレーの圧力に動じることなく噴射し続けることにつながった可能性がある
【その他】
・事前の訓練と平時から適切な対策を実施しておくこと、ヒグマがいることを前提として迅速に判断し行動することが、被害防止に重要である∧北海道環境生活部ヒグマ対策室∨
(完)