■労働力
市は、2015(平成27)年から地域おこし協力隊員を受け入れている。隊員は市の会計年度任用職員(以前の嘱託・臨時職員に似た非常勤職員)として採用され、市が決めた勤務先で仕事をこなす。
隊員の勤務先は、市の内部調整で決定する。決定に至るプロセスは次の通りだ。
①担当部署が庁内の各部署に協力隊員の配置が「必要・不必要」かを確認する
②「必要」とした部署が要望してきた勤務先に隊員を配置
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これまで網走市に赴任した協力隊員は計7人。このうち3人は、中心市街地の活性化を目的に地元商店主などにより設立された「株式会社まちなか網走」に配置された(隊員の2人は現在も勤務中)。
市は協力隊員を民間企業に配置した理由について、「株式会社であるものの、まちづくりを目的にした民間企業であるため」(担当者)と説明する。
株式会社まちなか網走は現在、中心市街地の商店街でゲストハウスとコワーキングスペースを運営する。市によると、同社に社員はおらず、協力隊員は貴重な労働力となっている。
■定着しないワケ
網走市においての協力隊員の定着率の低さの背景には、市役所と協力隊員のまちづくりに寄せる想いの〝ミスマッチ〟がありそうだ。
市役所側は、協力隊員を〝単純な労働力〟と捉えているきらいがある。一方、協力隊員の一部は〝自分の能力や経験は網走の魅力づくりに役立つはず〟と強い想いを抱き、赴任している。
こうしたミスマッチが、市役所や勤務先担当職員と協力隊員とのコミュニケーションの足かせとなり、本来の目的である「地域づくり」や「定住」が薄れてしまうケースもあるようだ。
北見市は、「カーリングサポート隊」として地域おこし協力隊員に教室・体験の開催や学校・少年団での指導、各種ツールをいかした情報発信などに取り組んでもらっている。活動内容はとてもシンプルで明確だ。
本紙取材では、協力隊員の勤務先や扱い方に疑問を抱く市民や市職員は少なくないことがわかった。かつての公約で「人口減少社会への挑戦」とした水谷洋一市長。協力隊員の定住率を向上するためにも、将来のまちづくりビジョンを明確に市民に示すことが求められている。