開墾から農林業の発展へと地域にとって欠かせない存在だった農耕馬をテーマに、北見市端野町歴史民俗資料館主催の端野再発見講座「馬のいた暮らし」が市端野図書館で開かれた。元・北見市史編纂委員の石井健一さん(77)が講師を務め、重要な働き手だった農耕馬の歴史を紹介した。
「かつてはどの農家にも1頭はいた。最近、端野自治区で馬を見掛けますか」と切り出した石井さん。「この地域では、古くは馬がいなかったのでは。アイヌ語に馬という言葉がない」と投げ掛け、オホーツク海沿岸に馬が登場する明治初期の漁場管理「場所」をはじめ駅逓(てい)、北見道路の開削と、交易の開始とともに明治期に急激に役割が増えた馬の歴史を説明した。
端野では主に、農耕や造林、運送で馬が使われていたと紹介。講座の受講者からは「水田や畑ではあまりに大きい馬は扱いにくかった。大型馬は山で造材に使われた」「代表して道営に出場する馬を決めるばんば競走が行われ、私設馬券が飛び交っていた」「あそこの馬はいい馬だった」と証言も語られた。
伝染病があったり、売買されたり、馬の世話は難しかったとする一方「恩を忘れない動物だった」と石井さん。「チッチッチ」と馬を操る言葉を紹介し、懐かしい話で受講者と盛り上がった。(寒)