北見市内の小学校で発生した「いじめ重大事態」で、被害児童の母親がこれまでの経過や学校側の対応に対する思い、現在の心境などについて本紙の取材に応じてくれた。母親は「私も子どもも、誰かを責めるのではなく、このようなことが二度と起きないこと、それだけを強く願っています」と訴えている。
被害児童に対するいじめは昨年5月に始まった。被害児童は母親に「学校に行きたくない」と訴え、肌には自身で傷つけたと見られるひっかき傷が見つかった。母親はすぐに担任教諭に相談。担任の「支えていく」との言葉を信じて学校に通い続けることにした。
しかし、それ以降も被害児童は複数の児童から「汚い」「気持ち悪い」など、言葉や態度によるばい菌扱いや無視、嘲笑などのいじめを日常的に受け続けた。児童は「学校は楽しい」と明るい様子で母親に伝えていたため、母親はいじめが続いていることに気づかなかったという。
9月、被害児童が別の小学校に通う親友宅に泊まった際、親友にいじめの事実を打ち明けた。「親友の子は正義感が強く、自分の母親に伝えたのです。そして私の耳に入りました。その頃、私が体調を崩していたこともあり、気を遣っていじめのことを家族には言えなかったようです」と振り返る。
「そして家族で話し合った時、子どもは『毎日死にたい気持ちだったけれど、(事実を知ると)ママが生きていけなくなり、きょうだいが悲しむと思い言えなかった』と話してくれました」。
母親はすぐに学校と教育委員会に掛け合い、その場で転校を決めた。市教委は「いじめ重大事態」と認定し、いじめ対策支援チームを発足。被害児童や加害児童、周辺児童、教職員への聞き取りを行い、いじめ行為があったことを確認した。
最初に相談した5月以降、学校側から母親への連絡はなく、支援チームの報告によると「今回のいじめ重大事態の大きな要因は、被害児童と被害児童保護者に親身に寄り添う姿勢が欠けていたこと、また、表面的な児童理解と指導に終始し、事案を根本的な解決に導くことができなかったことが挙げられる」などと学校側の対応を厳しく指摘している。
母親は「私自身、まずは担任に相談という考えしかなく、学校任せになってしまいました。最初から教育委員会に相談すべきだったのかもしれません」と語る。
母親によると、被害児童は「いじめを受けている子は我慢せずに声を出してほしい。あとは大人達が頑張って解決してくれます。いじめをしている子には、いじめは人を死にたい気持ちにさせてしまうことを伝えたい」と話しているという
一時は心身ともに憔悴し、学校を欠席する時期もあった被害児童。まだ体調は万全ではないものの、現在は転校先で安定した学校生活を送っているという。
母親は「このようなことは二度と起きてはいけない。いじめをした子どもよりも、それを止められなかった学校側の対応が残念でなりません。また、今回のいじめ重大事態が他の学年の児童や保護者など学校全体に周知されていないことは疑問に感じます」と現在の心境を吐露している。 (柏)