国が年間の時間外労働時間を規制
2019年に施行された国の働き方改革関連法によって労働基準法が改正され、多くの業種で時間外労働に上限が設けられました。運送業と建設業、医師の3つの業種は、5年間の準備期間が設定され適用が猶予されていたものの、2024年4月から上限規制が始まりました。この業種は長時間労働になりやすく、過労死など従事者の健康への悪影響などが懸念されていました。上限規制で過度な時間外労働の是正が期待される一方で、労働時間の減少により物流や地域医療などに支障が生じることをいわゆる「2024年問題」と呼びます。
運送業への影響大きく
運送業は少子高齢化による慢性的な人手不足のため、結果として長時間労働が常態化していました。以前から問題視されていましたが、その労働に支えられ物流が維持されていたことも事実です。4月からはトラックやバス・タクシードライバーの時間外労働時間は原則、月45時間、年360時間までとされ、特別な事情がある場合の上限は年960時間以内となります。労働時間が短くなることで収入が減少しドライバーの離職や新規就労者の減少などが発生するほか、輸送能力が不足し「モノが運べなくなる」可能性などが懸念されています。国土交通省によると輸送能力は2030年には全国で約35%不足する可能性があると試算されています。
輸送能力が不足するとどうなる?
運送事業者は一般消費者などのニーズに応えられなくなり、今までどおりの輸送ができなくなります。同量の輸送を維持するためにはドライバーの増員が必要ですが、現在の労働人口減少が続く状況では人材が確保できず事業そのものが行き詰まる可能性があります。
一般消費者は当日、翌日配達の宅配サービスが受けられなくなったり、新鮮な水産品や青果物などが手に入らなくなるかもしれません。
問題の解決にはどうしたら?
問題の解決には事業者と一般消費者の協力が欠かせません。事業者は運行スケジュール管理の電子化など作業効率化を行い、長時間労働の大きな原因となっている荷物や積み込みを待つ待機時間を減らす必要があります。
消費者は確実に荷物を受け取れる日時・場所の指定や宅配ボックス・ロッカー利用による置き配の推進で再配達を減らすほか、まとめ買いなどで注文回数を減らすなどの配慮が問題解決へのカギとなります。限りある「輸送資源」を大切に使いましょう。
「置き配」のススメ
置き配とは宅配事業者が受取人があらかじめ指定した場所(玄関前、宅配ボックス、車庫など)に非対面で荷物を届けるサービスです。
再配達の必要がなく、2024年問題の影響を受ける事業者のほか、荷物を在宅して待たなくてよいなど受取人にもメリットがあります。
玄関前に荷物が置かれたままでは盗難や雨などによる汚損の心配がありますが、宅配ボックスや宅配バッグを使えば心配は大幅に軽減されます。
宅配ボックスとは
宅配ボックス(バッグ)は個人宅の荷物受け取りに特化した入れ物で、金属製の丈夫なものや折りたたみができて場所をとらない布・ビニール製のものなどがあり、最近では住宅・マンションなどの建築時に最初から外壁に埋め込んで備え付けるケースもあります。
ボックスには郵便ポストとの一体型や受け取り用の印鑑、盗難防止のダイヤル錠やワイヤー錠が付いているものもあります。好みのデザインや住宅のスペースに合わせて選ぶことができます。