■歴史
網走市の運転免許自主返納促進事業の歴史は古く、2008(平成20)年度に創設された。
当時は対象者を65歳以上とし、返納者には身分証明としても利用できる住基カードの発行手数料(500円)を免除した。
住基カードの手数料を免除した背景には、運転免許を返納することで「身分を証明するものが減ってしまう」という、高齢ドライバーの社会からの孤立感を軽減する狙いだった。
しかし、マイナンバー制度の導入に伴い、同事業は15年12月に終了。同事業を通じての免許返納者は年間30人前後で推移していた。
08年度までの過去5年において、網走署で自主返納により運転免許の取り消し手続きをした65歳以上の高齢ドライバーは2人しかおらず、市の同事業は一定の効果があった。
■119人
21年度に同事業が復活。背景には、高齢ドライバーによる事故が社会問題化したことがある。国は22年、75歳以上のドライバーを対象に「運転技能検査」を導入するなど事故防止策を講じている。
復活した同事業は、75歳以上の高齢ドライバーを対象とし、当初は返納者に公共交通利用券(1万円分)を交付。23年度からは公共交通利用券とどこバス定期券(3カ月分)とのセットにした。
こうした〝引き換えメニュー〟を充実させることで、免許返納に伴う「交通弱者になってしまった」との不安感を解消しつつ、返納を促す狙いだった。
以前の同事業を通じての返納者は年間約30人だった。復活した同事業の利用者は、23年度が119人と過去最高を記録した。
─・─・─・─・─
次回は、高齢ドライバーの運転注意点や道が実施したアンケート調査の結果などを紹介する。