■それだけは…
赤レンガ塀は、観光名所ともなっている網走刑務所を象徴する存在だ。これまで、映画やドラマなどに登場し、最近は漫画・アニメの影響で若い世代の注目度も高まっている。
解体は耐震工事の一環で、昨年から始まった。同刑務所によると、第9期までを予定しており、刑務所を囲むように設置される赤レンガ塀(総延長1090㍍)を解体する方針だ。
現在の解体工事は第2期(工期=今年5月28日~12月25日)で、正門に向かって左側に設置される赤レンガ塀約125㍍を撤去する。
同刑務所によると、赤レンガ塀の解体に着手する前、網走市役所や博物館網走監獄などの関係者と意見を交わしたという。意見交換の際、「『赤レンガ塀すべてを撤去するのではなく、正門だけは残すべき』との指摘もあった」(関係者)。
こうした声も踏まえ、赤レンガ塀の正門部分だけは残すことに決まった。
新設のコンクリート塀にはレンガ調のタイル張り
■雰囲気残し
現在、進められている第2期工事の事業費は2億3100万円。新設されるコンクリート塀の高さは4・5㍍ある。映画やテレビなどで取り上げられた赤レンガ塀は、二度とお目にかかることはできないのだろうか?
同刑務所を取材した際、赤レンガ塀解体後に設置される新しい塀のサンプルを見ることができた。
サンプルの塀には、レンガ調のタイルが張られていた。タイルの色は、赤レンガ塀に使用されているレンガの色に酷似していた=写真=。
同刑務所の担当者は「新しい塀は、赤レンガ塀の雰囲気を残すように配慮されています」と説明してくれた。
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映画で脚光を浴びた網走刑務所。刑務所が観光名所となっている地域は、国内外で数少ないだろう。
赤レンガ塀は、網走刑務所の歴史であり、使用されたレンガは当時の受刑者が焼き上げ、イギリス式という工法で積み上げられた。
耐震工事に伴って、姿を消すことになった赤レンガ塀。残されることになった正門が、歴史の伝承役を担ってくれるだろう。