■異常事態
3件のいじめは、3月21日の同市いじめ問題専門委員会で重大事態と認定。今後は、弁護士や学識経験者らからなる同市いじめ問題調査委員会が多角的な調査に着手する。
小田部氏は一般質問(6月21日)で、SNS被害を除いた暴行事案(ズボン下ろし)に絞り、延べ53回にわたり同市教委や水谷市長に質問。このうちの18回は、同市教委の答弁調整により「休憩」となり、空転状態に陥った。
同市議会の一般質問で、1人の質問に対して「18回」の休憩は異例だ。
■なぜ公表したの?
小田部氏の質問に対して、同市教委や水谷市長は「市いじめ問題調査委で真相が明らかになる」—との答弁を重ねた。一方、小田部氏は、まだ調査結果が出ていないのに、今年3月31日に記者会見を開いた市教委の判断を疑問視。この会見で同市教委は、加害者とされる人数などを誤って発表し、後日、訂正した経緯がある。
記者会見を開いた理由について、同市教委は「被害生徒を誹謗中傷するような内容が拡がっていた」と答弁した
本紙は後日、同市教委にズボン下ろしに関してどのような誹謗中傷があったのかを取材。「被害生徒が責められるような危機があった」としたが、誹謗中傷の媒体(ネット、電話、チラシなど)や件数などの詳細は把握していなかった。
3月31日の記者会見を機に、ネット上では誹謗中傷の書き込みが急増。小田部氏はこうした状況も踏まえ、いじめ問題調査委によって真相が明らかになった上で公表すべきだったと主張した。
小田部氏の指摘に、岩永雅浩教育長はいじめ防止対策推進法とも照らし合わせた上でも問題はないとした。
市政トップの市長に求められる人権に配慮した冷静で慎重な判断
■トップの冷静な判断
小田部氏は、自身の質問に即座に答えられない同市教委の体制、答弁内容の食い違いなどを踏まえ、水谷市長に対し「真相を語らない姿勢は、悪質な隠ぺい体質につながりかねない。(こうした水谷市政の姿勢は)いじめ問題のようなナイーブな案件の解決への道を遠ざけてしまう」とし、見解を求めた。
水谷市長は「(小田部氏の指摘を)私は受け入れられないし、当たらないと思っている。(その理由は)今回の事案については被害者が確実にいる、ということだと思っている」とした。
……………………
小田部氏の質問の争点は、「いじめ問題を公表するタイミングと目的」だ。また、水谷市長の教育部局への関与姿勢を疑問視している。
水谷市長は答弁で「被害者が確実にいる」としているが、小田部氏の主張は「詳細な調査結果を基に公表すべき」だ。
教育行政をこれ以上に混乱させないためにも、網走市政トップである水谷市長には、すべての子どもの人権を念頭に置いた上での冷静で慎重な判断が求められている。