あの夏、「そのうち暖かくなると思っていたら、ついにならなかった」と北見市内の稲作農家は1993(平成5)年を振り返る。気象庁に残る気象データをみると、1993年の夏は、なにせ気温が上がらなかった。
最高気温が20度に達しない日が田植え後の6月に22回、花が咲き、受粉する最も大事な7月後半から8月上旬にかけて7日連続を含む13回、9月に17回。8月後半になってようやく真夏日が2回あったが農家は「もう遅い」。
食用の米が足りなくなり、米販売店には買い求める消費者が殺到した。「夜中に押しかけて来て、10㌔1万でも2万円でもいいから売ってくれという人もいた」とコメ販売店。この年のオホーツク・十勝地域における水稲の作況指数は8。平年値で約450㌔収穫する10㌃当たり収量は40㌔にも及ばず、刈り取り作業が負担になった。その後は作況指数100を切る不作の年と上回る豊作の年を3年ずつ繰り返し、2003(平成15)年は作況指数19で10㌃当たり収量86㌔に止まっている。
品種が「はくちょう」から「きたゆきもち」に切り替わり、温暖化傾向もあってここ10年で指数が100を割ったのは2018(平成30)年の91の1回だけ。2021(令和3)年は指数113で、農家は「反(たん)当たり10俵(1俵=約60㌔)近くとれた」と振り返り、今年も「最近では最高だったおとどしに近い出来はありそう」と期待を寄せている。(寒)